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zoom RSS 【テレ朝メルマガ 報道ブーメラン第817号】大好きなお母さんを失った家族に、押し寄せる貧困の影・岩手

<<   作成日時 : 2016/04/06 22:10   >>

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2016.4.6.

● 報道ブーメラン 第817号 ●
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 ■01■記者コラム
      「大好きなお母さんを失った家族に、押し寄せる貧困の影」
        〜東日本大震災から5年〜
      社会部/鈴木 彩加
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「妻よりも俺が死んだ方が、子どもたちにとってよかったんじゃないかなぁ…」。岩手県大槌町。津波で妻を亡くした飛田啓章さん(40)は、絞り出すように呟いた。

中2の長男(14)、中1の長女(13)、小5の次女(11)、保育園の次男(6)の4人を男手ひとつで育てるシングルファザー。日が昇る前から台所に立ち、朝ごはんと弁当を作る。五月雨式に渡される学校のプリントに目を通し、中学生と小学生の3人を送り出すと、布団から出てこない末っ子に何度も声をかけながら、傍で洗濯物を畳む。

次男を保育園に送り届けた後は、自動車販売の営業に忙しく走り回る。「お惣菜を買うのは簡単だけど、飛田家の味を忘れてほしくない」。どんなに仕事に追われても、定時より1時間早く退社して夕食を作り、掃除にお風呂にと、座る暇さえない。

やっと一息つけるのは、子どもたちが寝静まった後になる。「夜10時を過ぎたらいいよ」。その言葉に甘え、連日、日付が変わるまで、亡くなった奥さんと子どもたちの話を聞かせてもらった。

震災前、休日には奥さんと一緒にスーパーで買い物をし、代わりばんこでご飯を作った。一念発起して建てた一軒家には、いつも賑やかな声が響きわたり、自分の部屋を与えられた子どもたちは飛び跳ねるようにして喜んだ。遠くへ出かけることはできなかったが、近くの公園へ家族みんなで遊びにいく、それだけで十分幸せだった。

そんな生活は、あの日を境に一変する。当時36歳だった妻・佳子さんが見つかったのは、大津波が押し寄せてから1か月後のこと。遺体が佳子さんだと示すのは、髪の長さと薬指についた指輪だけだったけれど、対面した時に流れた涙は“嬉し涙”だった。

「誰にも気づかれることなく冷たい海にいるなんてかわいそう。家に連れて帰って、お母さんのことが大好きだった子どもたちに、やっと会わせてあげられる…」

長男は、お母さんと再会すると、それまで溜まっていたものが爆発したかのように、炉に入るまで泣き続けた。脇で見ていた長女はポツリ。「あぁ…帰ってくると思っていたのに…」。

やんちゃな次女は、今でもお母さんのことを口にする。取材で初めて会った時も、「お姉さん、誕生日いつ?」「お母さんと近いね」と嬉しそうに私を見つめた。

今年小学校に入学する末っ子は甘えたい盛り。「寝るまで頭をなでていてね」。最近はそう言って寝室まで飛田さんの手を引いて離さない。町で成人の女性を目にすると、知らず知らずのうちに、その中に「お母さん」を探してしまっているという。

それでも取材でお邪魔した私たちを、屈託のない笑顔で迎えてくれた子どもたち。小さな体に抱えているものを、到底計り知ることはできず、一体どうやって現実を受け入れ、心に折り合いをつけて過ごしているのかと考えると、身を引き裂かれそうな思いに駆られる。

予期せず、かけがえのない存在を失った、そんな家族に容赦なく襲いかかるものがある。経済的な苦しさだ。飛田さんの忙しさとは裏腹に、家計は厳しい。月々の給料は手取り15万円。毎日早く退社する後ろめたさから、自ら会社に時給制を申請していて、学校の行事などで休むことが多い月には、手取りが10万円ほどにまで減ってしまう。

住宅ローンの返済、光熱費、食費などを差し引くと、手元からなくなるのはあっという間。農協で働いていた佳子さんの労災が認められ、今は補償に頼る生活を送るが、これから進学を控える子どもたちの教育費や、合わせて月1万5000円の給食費でさえも、大きな負担としてのしかかる。

さらに立ちはだかるのが、支援制度の“壁“。国民年金の加入者が亡くなった場合に遺族へ支給される「遺族基礎年金」は、母子家庭に支給される一方で、父子家庭には支給されない。震災で父子家庭が多く生まれたのをきっかけに2014年に法改正されたが、対象は改定後のため、震災遺族は対象外のまま。飛田さんは受け取れていないのだ。

「この分け方はなんなのか」。ひとり親への支援は、働き手を失って困窮する母子家庭を想定して決められることが多い。子どもたちの生活や将来への見通しがつかない不安を抱える飛田さんには、やりきれない思いが募る。「自分が死んだ方が、自宅のローンもなくなったし、子どもたちに我慢をさせることもなかったのではないか」

そんな父親の姿を近くで見ている子どもたちは、幼いながらに家計のことを気にするのだという。「お金がないんだから、水、節約しなきゃだめだよ」。しっかり者の長女は兄弟たちに声をかけ、毎日サッカー部の練習に打ち込む長男は、「欲しい」と口にする数少ないもののひとつ、スパイクでさえも、「買って欲しいと言いづらい」

「子どもたちのために、これから一体どうしたらいいんだろう。相談する奥さんもいないし…」。飛田さんとの話は、いつも最後はこの言葉に行きついてしまう。愛する家族を失い、日々、綱渡りの生活。その上先行きは不透明。飛田さんは、彼らの将来を考えると眠れなくなると言い、「みんな自立したら、俺いっきにボケちゃうだろうな」と小さく笑った。

東日本大震災から5年。私たちはよく“節目”と報道するけれど、被災地では、あの日から始まってしまった時間は、今も絶え間なく続いていて、これからも逃れることはできない。一方で、このまま月日を経て、もしも風化が進むなら、被災地から助けを求める声を上げにくくなってしまうのではないかと感じる。

被災地を訪れる度に自分の無力さを痛感させられる私ではあるが、これまでに取材をさせていただいた方々にもし恩返しできることがあるとすれば、被災地の今を、しっかりと伝え続けることだと信じている。(了)

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