定額給付金騒動が麻生内閣にもたらしたもの

以下、転載です。

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2008.11.19.
● 報道ブーメラン 第456号 ●
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記者コラム
  「定額給付金騒動が麻生内閣にもたらしたもの」
   政治部 記者/千々岩 森生
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1人あたり1万2000円。18歳以下と65歳以上は、2万円が支給されることになった定額給付金。手元に“お金”がやってくる現実感と、2兆円規模という途方もない数字が人々の関心を呼んだ。そして、表面化した総理と閣僚たちの迷走ぶりに、多くの国民が麻生政権の行く末を案じた。

 しかし、給付金騒動がもたらした政権の危機は、“迷走”だけではない。背景には、より深刻な問題が広がっている。それを解く鍵は、今から3カ月前、8月末に行われた与党内の、“攻防”にあった。まずはそこから思い起こしてみたい。

8月下旬、福田政権は緊急経済対策の取りまとめに奔走していた。折りしも、年初来の原油価格の高騰が、生産コストを押し上げ、農業・漁業に甚大な影響を与えていた。食料品などの高騰も、庶民生活に暗い影を落としていた。

 福田総理は、与党の政策責任者らに、対策をまとめるよう指示を出した。取りまとめの中心となったのは、自民・保利政調会長と公明・山口政調会長。両党は、総理の指示から、わずか1カ月の短期間で、事業規模11兆7000億円に上る「安心実現のための緊急総合対策」をまとめた。

 しかし、大きな課題が残されていた。公明党が強く求める定額減税の扱いだった。山口政調会長は、「重大な決意」を持って交渉に当たると、ぶち上げた。重大な決意、つまり実現しなければ、連立離脱もあるという姿勢を匂わせたのだ。

 公明党側の強い思いとは裏腹に、自民党側は拒否感を漂わせていた。8月25日、日本記者クラブでの講演で、保利氏はこう述べている。「公明党からは、定額減税を入れろときている。我々としては難しいと考えていて、今後の折衝の焦点となると思う」。

 別の幹部は同じ時期、「定額減税はやらない。絶対にやらない」と明言していた。「財政難のこの時期に2兆円規模の財政出動など出来るわけがない。バラマキ批判を受けるのは目に見えている」。
自民党側の思いはこうだった。連立離脱をほのめかした公明党側への不信感もあった。

 取りまとめの期限は、8月最終週の金曜日、29日。だが事態が大きく動いたのは、前日の夜だった。

 28日夕刻、自民党本部を出た保利氏は、日本橋のうなぎ屋で親しい農水族議員らと会った。ここまでは、いつもの風景だった。保利氏がうなぎ屋を出たのは、同日午後8時。普段は、早ければ午後7時にも帰宅する保利氏だったが、向かった先は自宅のある神奈川ではなかった。

 もと来た道を戻るように、車は都心を目指した。到着したのは、永田町の住人が頻繁に会合場所として利用する「ホテルニューオータニ」。地下駐車場に吸い込まれた車から降りた保利氏は、エレベーターで指定された部屋へと向かった。

 午後9時。保利氏の後を追うように、公明党・山口政調会長が部屋に入った。政調会長どうしの協議が始まった。定額減税を盛り込むよう迫る山口氏に対し、保利氏は首をたてに振らない。会合の出席者は「公明党は全体会議で相当しばりをかけられているようだ」と感じていた。平行線のまま、最終結論は両党の幹事長会談に持ち越された。

 この時までは、表に控える報道陣も含め、定額減税は合意に至らないと多くの人々が感じていた。

 公明党・北側幹事長が到着したのは、午後9時半だった。遅れて、自民党・麻生幹事長も入室。場の空気が一変したのは、この時だった。両幹事長は個人的にも親しく、信頼関係を築いていた。

 ここで麻生幹事長は、公明党の要求を受け入れる姿勢を示した。安倍内閣で幹事長を務めたあと、福田内閣で無役だった麻生氏は、1年に渡って地方講演を続けていた。そこで感じた景気の悪化と財政出動を厭わない政治姿勢、さらに選挙での自公協力の重要性を鑑みての決断だった。保利氏ら定額減税に反対してきた関係者は驚いた。

 経済財政を担当する与謝野大臣が急遽、自宅でくつろいでいたところを呼び出された。午後11時のことだった。「財政的に難しい」。そうした与謝野大臣の主張は、流れを変えるには至らなかった。協議が終わった時、時計の針は、午前0時を、ゆうに過ぎていた。

 公明党が主張し、自民党が難色を示し続けてきた定額減税を実現に向かわせたのは、後に総理大臣の座を射止めた麻生氏その人だったのだ。

 自民党の政策担当者には、大きな不満が残った。先月末、定額給付金に姿を変えて、規模と一人当たりの額が具体的に示されたあと、自民党幹部はこう述べた。「俺は公明党に振り回されているよ。本当に迷惑なんだよ」。

 バラマキとの批判を免れないと同時に、景気対策にもならない。与謝野大臣を含め、担当者の多くは、今でもこう感じている。さらに、交渉を通じて生じた公明党との溝を隠そうとしない幹部もいる。

 定額給付金がもたらした麻生内閣の揺らぎは、所得制限を設けるかどうかで露呈した迷走ぶりだけではない。このように自公に“隙間風”をもたらし、自民党内に総理に対する微妙な感情が、火種としてくすぶり続ける結果となった。

 定額給付金が支給されて低所得者の安心につながるとともに、総理の思い通り景気回復に結びつけば、賞賛されるべきは、この政策を盛り込んだ総理の決断だ。しかし、定額給付金が期待はずれに終わり、国民の批判を浴びることになれば、その責任は、まさに、総理自身にあると言わざるを得ない。(了)

この記事へのコメント

2008年11月19日 22:17
続けて、転載です。
■世論調査結果報告
「麻生内閣の支持率が急落 発足2カ月で30%下回る」
テレビ朝日では、以下の通り世論調査をおこないました。
◇調査日:11月15日(土)、16日(日)
◇調査方法:層化二段無作為抽出(全国125地点)
◇対象:1000人
◇有効回答率:59.2%
上記日程で行った調査で、麻生内閣の支持率は29.6%で、先月の調査より13.2ポイント急落しました。不支持率は、9.5ポイント増の46.8%でした。定額給付金をめぐる一連の騒動が影響したものと見られます。
その定額給付金の支給については、「支持しない」が全体の6割に上り「支持する」と答えた人の2倍に達しました。
・世論調査全データは、『報道ステーション・ANN世論調査』で!
http://www.tv-asahi.co.jp/hst/

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