”リアル・ニューディール”②


ポストカーボン研究所のリアル・ニューディール(続き)

p10
<解決策>

「我々はエネルギー消費全体を減らし、基本的に再生可能エネルギーで動くよう
に経済を再構築する必要がある。」

 化石燃料の減耗と気候変動問題への明らかな答えは、単に石油、天然ガス、石
炭の代替エネルギー源に切り替えることだ。
 しかし、この答えは、2つの問題ですぐに動きが取れなくなる。

 まず、私たちが必要としているほど速やかに、現在の化石燃料が与えてくれて
いるほど大量に、安くエネルギーを供給する能力をもった代替エネルギー源は
(再生可能なものもそれ以外も)ないことだ。
 2つ目に、我々は、石油、天然ガスと石炭のそれぞれの特性に合わせるよう、
交通や電力、食料システムのインフラや建物のストックを設計し建ててきたの
だ。異なるエネルギー源に移行するためには、これらのシステムの多くの側面を
再設計しなおす必要がある。

 エネルギー転換は、既存のエネルギーインフラの少々の手直しでは達成できな
い。ちょうど今日の化石燃料経済が1800年の農業経済とシステム的、包括的に異
なっているのと同じく、2050年の脱化石燃料経済もまた、私たちが今日慣れてい
る経済とは著しく異なるだろう。
 この違いは、都市のデザインや土地利用のパターン、食料システム、生産と輸
送ネットワーク、雇用市場、交通システム、医療保険、旅行、その他もろもろに
反映されることになる。

 これらの変化は、私たちが計画しようがしまいが、いくつかの様式で起こるだ
ろう、単に、化石燃料の市場価格が希少性を反映する結果、高い費用が社会を適
応に追い込むのを待つだけでよいのかどうかには、議論の余地がある。
 しかし政府の計画が欠けていれば、この転換は、カオス的で苦痛に満ち、破壊
的で、おそらくは(気候予測の最悪ケースが実現するのなら)生き延びることが
できないという結果に終わるだろう。

 米国エネルギー省(DoE)の研究が最近示したように、化石燃料の減耗問題に対
する受動的なアプローチは「社会的・経済的・政治的な」「かつてない」規模の
コストになるだろう。ここでもまた、大胆な行動が必要とされている。

 我々はエネルギー消費全体を減らし、基本的に再生可能エネルギーで動くよう
に経済を再構築する必要がある。そして、連邦政府がその道を先導しなければな
らない。
 このエネルギー転換は、5つの要素に分けられる。
再生可能エネルギーへの大規模なシフト。交通システムの改造。電力システム。
食料システム。建物ストックだ。

脚注:
15 Hirsch, R. et al. (2005) Peaking of World Oil Production: Impacts, Mitigation, & Risk Management.
Washington, D.C.: U.S. Department of Energy.


p11

「高速道路の建設と拡張は、それゆえ停止させなければならない。そして連邦の
交通資金は、電化された、あるいは脱自動車のインフラとサービスにごっそり移
さなければならない。」


1. 即座に、大規模に再生可能エネルギーへの移行をする

 代替エネルギー源の開発は、国中の在来の化石燃料への依存を減らす計画の要
石であるにちがいない。
 しかし、原発や工業的バイオ燃料、オイルシェールとタールサンドのような低
品質な化石燃料といった、議論されている多くの代替品は、エネルギー収支比
(EPR)が低い、環境影響が大きい、資源ベースが限られるなどの重大な欠点がある。
 風力、ソーラー、進歩した地熱などの再生可能エネルギー源は、明らかに国と
世界のエネルギー問題に対する長期的な解決策である。
 しかし、新たな太陽電池材料とプロセス、新たな地熱や潮力発電技術などと同
じく、新たなエネルギー貯蔵技術についても更なる研究が必要である。
 この多くは私企業によって実施される一方で、経済危機は、必要な投資を遅ら
せたり切り下げるため、政府の支援の必要性が増す。

 米国エネルギー省は、注意深く設定された一貫性のある規準を用いて、利用可
能な代替エネルギー生産技術に関する短期間の包括的な評価を行うよう義務付け
られるべきである。
この評価は、州と自治体が連邦政府と同じく実用的な計画と投資決定を行うのを
助ける形で行われるべきである。
 これは即座に必要であるため、ポストカーボン研究所は、国際グローバリゼー
ションフォーラムと共同して、エネルギー収支比、環境影響、規模拡大の可能
性、資源必要量を含めた規準を用いて、代替エネルギー源の第一次相対比較評価
を行っている。結果は2009年2月までに公表される予定だ。


2. 交通システムを電化する

 アメリカの高速道路や空港、自動車、バス、トラック、航空機への既存の投資
は膨大である。しかしこれは、ほとんど全てが石油に依存した交通システムであ
る。これは高い燃料価格によって著しくハンディキャップを負い、実際の燃料不
足によってひどい打撃を被るだろう。
 道路を用いる乗り物の電気自動車化は助けになるたろうが、平均的な乗用車の
平均使用年数を15年と仮定16 すれば、完全に普及させるためには20年掛かるだ
ろう。
 実際には代替品が見つからなければ、道路補修やタイヤ生産は石油化学製品に
頼り続けるだろう。たとえ電気化されたとしても、トラックと私有自動車からな
る地上交通システムは、バスと鉄道といった公共交通、あるいは自転車と歩行と
いったモーターなしの代替案と比較して、本質的にエネルギー集約的である。
 それゆえ高速道路の建設と拡張は中止し、電化され非モーター化された交通イ
ンフラやサービスのために、連邦の交通資金を振り向けなければならない。この
完全な交通投資と優先順位のシフトのためには、全ての規模の政府による包括的
な計画と調整が必要となるだろう。

脚注:
16 Ibid.


p12

「連邦政府は、電力網を再建するために目標と規準を設定し、公共投資の資本を
提供しなければならない。」

 安価な化石燃料なしで飛行機と航空輸送産業を維持するための良いオプション
はあるとしてもほとんどない。転換の時期を通じて、いくらかは空の旅は残るこ
とはありそうだとしても、その費用は、継続的に上昇することは避けられず、航
空産業も次第に縮小することが避けられない。
 次第に、電化された高速の鉄道が主要都市間を結び、一番安価な手段となって
いくだろうが、今はまだ全国高速鉄道ネットワークはその揺籃期にある。
 今のところ、現存する私有自動車のストックは、カープーリング、カーシェア
リング、ライドシェアリングの(連邦政策と資金で支援された)地域ネットワー
クを通じて、より効率的に用いられなければならない。


3.電力網を再建する

 ほとんどすべての米国の電力網の専門家は、システムは危機に近づいており、
本格的なオーバーホールが絶望的なまでに必要であると認めている。17
 人口の増加と、必需品とみなされるようになった電化製品の爆発的な増加のた
め、電力需要は毎年1%以上増加し続けているが、発電容量は追いついていない。
現在、我々の送電網は100年前の技術と50-60年代に建設された高圧幹線に頼って
いる。
 これは脆弱で極端に非効率的なインフラであり、システムの運営者は、近い将
来に大規模な停電が起こることを予期している。

 必要なことは、同じレベルの技術を用いての単なる既存のシステムの強化では
ない。新たな発電容量は、再生可能エネルギー源から来るべきであり、その多く
は中規模の容量で、既存の電力網から遠く離れた地域に建設される。
 送電システムは、頑健な双方向のコミュニケーションや進化したセンサー、送
電システムの効率や信頼性、安全性向上のための分散コンピュータ、と同じく分
散型発電を支援しなければならない。
 地域の発電会社はすでに再生可能エネルギーと「スマートグリッド」への更新
に投資を始めているが、その作業は忍び寄る電源問題に対処するには余りにも遅い。
 その上、クレジットクランチは現在の作業を遅らせることがありそうだ。それ
ゆえ連邦政府は、目標と規準を設定し、公共投資の資本を提供することに踏みこ
まなければならない。

 この努力は私有企業を自治体電力会社よりも優先させることがあってはならな
い。実際に、いまや避けられない停電に直面して分散化エネルギーシステムの方
がより回復力があるのと同じく、発電システムの所有権をコミュニティレベルで
継承することが推奨されるべきである。


4.食料システムの脱炭素化とローカル化

 我々の国内の産業食料システムは、人間の労働力を最低限にしつつ安価で豊富
に食料を生産するという面では素晴らしく機能している。しかしそれはトラク
ター燃料や肥料、殺虫剤、除草剤と各種の輸送の面で、圧倒的に石油と天然ガス
に依存している。
 さらに、現在の食料システムは、米国における人為活動に伴う全ての温室効果
ガス排出量の20%以上に責任を負っている。18

脚注:
17 Jelter, J. (2008, July 11) Commentary: The urgent need to upgrade the grid. MarketWatch. San Francisco.

18 Neff, R. Chan, I. & Smith, K. (2008, August) US newspaper coverage of food system contributions to climate change. Public Health Nutrition.


p13

「新たな農業技術、新たな農民、生産と分配の再ローカル化がすべて必要とされ
る。」

 最近、オバマ次期大統領への公開質問状の中でマイケル・ポーランが雄弁に述
べたように、この状況は全く持続可能ではない。19
 燃料価格が上昇するにつれて、農民は次第に破産し、食料価格は急上昇する。
地球の気候が不安定化するにつれて、作物は枯れていく。アメリカが化石燃料へ
の依存をなくすための食料システムの計画的な再設計を実行しないかぎり、未来
は暗い。
 かつての農業社会では歓迎はされないものの人生の現実として不可避だった飢
饉が、ここ豊かなアメリカに復活するだろう。

 新たな農業技術と新たな農民、生産と分配の再ローカル化がすべて必要だ。そ
のために今度は、土地改革、新たな農民のための教育と財政支援、地域の食料加
工、貯蔵センターが必要となる。

 ポストカーボン研究所は英国の土壌協会と協同で、この文脈と個別課題、可能
性のある戦略を詳細に述べた「食料と農業の転換(2009年早期発行予定)」の報告
書を作成中である。


5.省エネと創エネのために、既存の建物ストックを改造する

 ほとんどの米国の住宅は、冬季の暖房が必要であり、これらの家庭のほとんど
は近年の基準によれば不適切な断熱が施工されている。大半の住宅は天然ガスで
暖房され、北東部の大部分は灯油で暖房されている。
 南部、南西部の建物は、夏季の暑さをしのぐ空調を必要としている。燃料不足
や停電、エネルギー価格高騰は、単なる不快さだけでなく、暑さ寒さによる死亡
率の大幅な増加をもたらす。

 新旧の建物のエネルギー効率を向上させる技術はすでに存在している。ドイツ
は冷暖房に必要なエネルギーを劇的に減らすための先駆的な「パッシブハウス」
基準を採用している。
 欧州連合は、その基準を2012年までに建物基準として採用することを検討中で
ある。
 米国では、Affordable Comfort Incorporated(ACI)のような組織が、数十年
間、同様な基準を求めて働きかけてきており、米国市長会議とアメリカ建築家協
会が、2030年までにすべての新設ビルをカーボンニュートラルにする全国基準を
設定するという、「2030年チャレンジ」20 を採用している。

 アメリカ国中で、数百万軒の建物をスーパー断熱にし、できる限り多くの場面
で代替熱源を用いることが可能であり、またそうしなければならない。
 数百万軒ものアメリカの住宅と公共ビルを改造するために知られている知識と
経験を広く普及させるためには、訓練された労働者と投資が必要である。バン・
ジョーンズがクリーンエネルギー部隊の提案21 で議論しているように、ここに
もまた、数百万人分の雇用創出の可能性がある。しかし、資金と新たな規制、教
育が必要である。
 

脚注:
19 Pollan, M. (2008, October 9) Farmer in Chief. The New York Times Magazine. New York.

20 See http://www.architecture2030.org/2030_challenge.

21 Jones, V. (2008) Clean Energy Corps: Jobs, Service, and Equal Opportunity and America’s Clean Energy Economy.
Oakland: Green for All.


p14

「このエネルギー転換を達成するためには、膨大な量の投資資本が必要となる。」

<エネルギー転換のための必要項目>

1.投資と資本化

 明らかに、このエネルギー転換を達成するためには、膨大な量の投資資本が必
要となる。今後10年間で1500億ドルを再生可能エネルギーに投資するとの公約
は、手始めとしては歓迎すべきだが、それは転換プログラム全体に必要な投資の
内のわずかな比率にすぎない。22
 記したように、必要な投資の多くは結果的には私企業から来ることになるが、
現在は私企業は経済的に収縮しており、ここでも再び重荷は政府に戻ってくる。
 どうすれば十分な資本が行き渡るようにできるだろう?現在の政府債務の状況
は、米国政府のIOUs(借金)の需要が限られているのと同様、よろめいているグ
ローバル経済の文脈でも持続可能ではないだろう。

 政府の投資を通じて直接お金を作る、など、必要資本を作る他のオプションを
追求しなければならない。この現状はドルの価値防衛には悪い含意があるだろう
一方で、憲法上は合法であり、ケネディとリンカーン時代にも歴史的な先行例が
あった。


2.調整

 エネルギー転換は、複雑で包括的であり、そのさまざまな戦略は相互に影響を
与えうるだろう。例えば、高速道路から鉄道サービスへと交通の向きを変えるた
めの努力は、製造業、農家、商業、雇用主の間の調整が必要である。
 それゆえ、すべての政府機関の中で、その機関全体の努力をエネルギー転換と
調整するために、相当な努力をはらうことが必要となるだろう。
 オバマ政権が特に転換を監視し管理するため、そして既存の機関が共通の目標
を果たすため共に働くのを助けるための、既存の機関とはつながりのないエネル
ギー転換オフィスを設置すれば、調整プロセスの本格的な助けになるだろう。

脚注:
22 For example, Google has published a plan (see
http://preview.tinyurl.com/5fsrp3) to transition to renewable energy in 20 years at a cost of $4.4 trillion, which is about 30 times $150 billion.

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