”リアル・ニューディール”③

ポストカーボン研究所の”リアル・ニューディール”(続き)

p15

3.炭素とエネルギー政策

 世界的には、化石燃料の消費を減らし再生可能エネルギー源への転換を推奨す
るための政策についてはすでに多くの議論と実験的な実施が行われている。
このような政策オプションを更に追求することが必要である。

 欧州連合で普及している炭素のキャップ&トレードの仕組みでは化石燃料会社
が自動的に炭素クレジットの賞金を受け取るのだが、売買を行う委員会の銀行員
に儲けさせ、既存の大排出者に報いる一方で、単に汚染の多い雇用をより貧しい
国に押しやるだけに終わりがちだ。23

 すべての炭素クレジットをオークションで配分することにすれば、すべての既
存の汚染者が購入に金を払わなければならなくなり、明らかに進歩したものである。

 キャップ&Dividend(配当)24 やキャップ&シェア25 のプログラムは、エネル
ギーコストの悪影響を緩和するために炭素クレジットのオークション収益を大衆
に直接分配し、さらに社会の公正さを促進するという面で進歩したものだ。

 アル・ゴアが提案したように、炭素税はエネルギー転換のために支払うべき政
府収入を増やし、所得税を減税して市民の税金を最小にしたりゼロにしつつ、化
石燃料の消費を抑制する。26

 しかし、このようなシステムはすべて、化石燃料の市場において、資源希少性
の制約がほとんどか全く働いていない場合を想定している。しかし実際には、希
少性が排出権取引や排出権シェア、排出権配当システムを部分的にでも無効にし
てしまい(石油会社は義務付けられたキャップの年次縮小率以上に石油の供給量
が減少すれば炭素クレジットを購入する必要がなくなるだろう)、その一方で極
端な価格ボラティリティが個別の消費者と産業全体のどちらをも圧倒してしまう
結果となる。
 炭素税のシステムにおいては、石油生産量の減少は、政府税収の減少につながる。

 資源減耗による希少性のジレンマへの一つの解決策は、英国で研究されている
「売買可能なエネルギー割当」(TEQs)配給システムだろう。
 売買可能なエネルギー割当システムでは、(ガソリンなど)個別の化石燃料の
炭素の割当は、毎年電子的にすべての成人に与えられ、その情報は燃料購入の際
に使用される磁気カードに蓄えられる。
毎年、割当された総量は、炭素排出目標および減少する燃料の利用可能性に対応
して減少していく。
 消費者は需要と供給のバランスに応じた市場価格で過剰な枠を売ったり、必要
分を購入するだろう。各消費者はこのようにして、燃料を節約する直接の利害関
係を持つことになる。

 一時的に古い車や断熱されていない家を持っており、余分な枠が必要な低所得
市民に対しては、優遇制度が取られるだろう。

 再生可能エネルギーポートフォリオ基準(RPS)や優遇固定価格買取(FIT)制度な
ど、直接、再生可能エネルギー源の開発を支援するための政策ツールは、その効
果によって評価されなければならない。
 一般的には、FITは政府が再生可能エネルギー源による発電価格を保証するも
のだが、エネルギー転換への企業家精神を発揮させることに成功しているように
見える。
2008年11月に、英国政府はそのような見込みを含めたエネルギー法を成立させた。

 カリフォルニア州のAB811のような州規模での財政政策は、各都市が家の所有
者に再生可能エネルギーの低率ローンを提供するのを助けることができるだろう。

脚注:
23 Goodstein, B. (2007, June 1) Learning from Europe: Designing Cap-and-Trade Programs that Work. Washington, D.C.: The Center for American Progress.

24 See http://www.capanddividend.org.

25 See http://www.capandshare.org.

26 Gore, A. (2006) An Inconvenient Truth: The Planetary Emergency of Global Warming and What We Can Do About It. New York: Rodale.


p16
「実際のところ、(食糧安全法および農業補助金を含め)食糧システムに影響を
与える法律と誘導策は、小規模で地域に根ざした、低負荷の生産者をより選択的
に支援するものでなければならない。」


4.教育

 エネルギー転換は、数百万人もの新規雇用につながる結果となるだろう。オバ
マ次期大統領は、5百万人のグリーンカラー雇用を要求しているが、エネルギー
転換には、実際はその目標の10倍ほども人手が必要となる。しかし、これらの新
たな職は、現在のわれわれの教育システムで提供されるものとは大幅に異なる技
能の組合せが要求されている。

 持続可能な農業生産や、再生可能エネルギー源の設置、電力網再建、鉄道延
伸、公共交通の建設、住宅エネルギーの改造などの新たな機会のために労働者を
準備させるためには、地域カレッジは費用が安く、沢山あり、広く分散している
ため、そこが中心的な役割を果たすことができるだろう。

 地域カレッジにこの新たな役割を果たさせるためには、大規模な教師への訓練
とカリキュラム開発が必要となるだろう。おそらくは教育省を通じた全国レベル
の協調し組織化が必要だ。

 このカリキュラムの組み換えは、すべての学級のガーデニングプログラムおよ
びエネルギーと省エネに関わる項目の強調したコースプログラムから始めなけれ
ばならない。


5.大衆へメッセージを送る

 ここで概要を示した範囲のプロジェクトの管理に成功するためには、あらゆる
段階とレベルで大衆が受け入れる必要がある。そしてそれは今度は、何が問題と
なっているのかを常に強調するための、そして短期長期の目標に注意を集め続け
るための、そして協調と自発的な犠牲の精神を育てるための連続的な用語とイ
メージを使用することに依っている。

 これは、政治的に分裂しており消費至上主義が愛国的行為と見なされだしてい
る国においてはそれ自身が簡単な作業ではない。
 ニューディールと第二次大戦においてそうであったように、企業のリーダーや
広告代理店やハリウッドすら努力の中でリストアップされなければならない。実
に、この高いレベルでの協力は、銀行と企業の救済によって経済を救うための連
邦政府の数ある努力への見返りと見なすべきである。

 オバマ次期大統領は草の根組織の周辺に、そして個人のエンパワーメントが運
動の所有物であるような選挙キャンペーンを立ち上げた。エネルギー転換は同じ
ように、化石燃料への依存を減らすためのツールと資源を提供することにより、
個人とグループ行動を呼び覚ますための洗練された、対話型のウェブ上のプログ
ラムによって助けられるだろう。

 税金控除を企業や教会その他の個人的な行動チームに集まったグループに提供
することができる。市長の挑戦のような市民のプログラムはまた、著しい役割を
果たすことができる。国際的なトランジションタウンズ運動のような草の根のイ
ニシアティブ27 は、化石燃料への依存を終わらせるための自発的な共同体の努
力に向けての道を作るかもしれない。

脚注:
27 See http://www.transitiontowns.org.


p17

「この脱中央集権主義の強調は、地域的な食糧や製造、エネルギー生産の自給を
増やすことを促進する、連邦以下の規模のプログラムの創造に翻訳されるかもし
れない。」


6.計画された脱中央集権主義

 フランクリン・ルーズベルト政権の時期には、アドバイザーたちはニュー
ディールは単なる新たな官僚的プログラムのトップダウン的押し付けimposition
なのか、それとも地域自身の発展戦略を計画する自治に基づいた健全な地域コ
ミュニティを建設することを目指したものかについて、健全な討論を行っていた。
 アーサー・モーガンはおそらく当時の一番の脱中央集権主義者であったが、そ
の運動は、トーマス・ジェファーソンにまで遡る伝統の、南部の農業者も含んで
いた。
 現在、脱中央集権主義の概念と戦略は、1930年代以上に真剣に取り扱わなくて
はならない。というのは、安価なエネルギーの終わりが不可避的にアメリカ人の
移動の自由を減少させ、生産と消費の再ローカル化を引き起こすからだ。

 この脱中央集権主義の強調は、地域的な食糧や製造、エネルギー生産の自給を
増やすことを促進する、連邦以下の規模のプログラムの創造に翻訳されるかもし
れない。


7.挑戦的な目的と目標

 エネルギー転換は4年あるいは8年で達成されることはない。既存の化石燃料
に基づいた社会的なインフラの建設には100年間掛かった。そしてその更新には
最低でも30~40年間の期間が掛かる。
 一つの政権で達成でき、そうしなければならないものとは、本質的な方向転換
であり、他の政権がその究極的な達成をするまで耐えられる変化プロセスの開始
である。

 オバマ政権は集団的な格闘、あるいは明確な目的への長い旅の感覚を国中にし
みこませることにより、この変化の向きに影響を与えることができる。一連の挑
戦的だが妥当な目標を、遷移プロセスの最初に毎年及び4年間分設定するべきで
ある。
 そして究極的な化石燃料への依存からの完全な脱却という目標は2050年のあた
りに達成することになるだろう。将来の政権は、この目標の実現に向けた戦略を
調整すべき立場になるが、超党派の合意を通じて目標そのものは変更できないよ
うにしなければならない。


p18

「エネルギー転換は4年あるいは8年で達成されることはない。…
一つの政権で達成でき、そうしなければならないものとは、本質的な方向転換で
ある。」

 目標は経済の全ての部門に触れたものであるべきであり、住宅、商業、教育機
関、政府を含めるべきである。それらは二酸化炭素の排出量を削減し、燃料消費
を削減し、再生可能エネルギー源を建設し、交通システムや送電線、食料システ
ム、建物のストックを、安価な化石燃料のない世界に向けて改造するための目標
でなければならない。連邦政府はすべての連邦ビルや部門、雇用者のための目標
を設定することによりリードすべきである。
 毎年の目標の達成は、大衆的な式や相互のお祝いとなり、長期目標のための努
力に焦点を当てなおすものであるべきだ。


p19

「アメリカが直面している挑戦は真のものであり、緊急であり、その道のりも険
しい。」


<結論>

 この提案の中で示されているのは、膨大でかつてない範囲のプロジェクトだ。
著者らは行動を取らない場合の費用を誇張してはおらず、また、今は持続できな
い安価な化石燃料のフローに依存している、相互依存の社会システムにおける包
括的な変化の必要性を過大に誇張しているわけでもない。
アメリカが直面している挑戦は真のものであり、緊急であり、その道のりも険しい。
しかしそれでも、我々はこのエネルギー転換を追求することにより膨大な利益を
得ることができる。我が国の化石燃料への中毒を終わらせることにより、世界の
エネルギー集中地域の警察官にならずに済ませられ、軍事予算の削減を通じて毎
年数千億ドルを節約することができる。
 我々はさらに実質的に、糖尿病、ガン、心臓病などの大規模な健康保険問題を
減らす食料システムを作り上げることによってさらに数千億ドルを節約できる。
 我々はほぼ直接間接に化石燃料に関連のある環境汚染を劇的に減らすことがで
きる。
 我々はアメリカ人がより技能を取得し、自律的になり、自分の共同体の回復力
を改善しその結果としてより幸福になるために実質的な貢献をできるようになる
のを助けることができる。
 我々は(他人の福祉に関心を持つ)リベラルと(地域自律と自給自足の)保守
派の両方が称揚する価値を増大させることにより、我が国の政治的な分裂を減ら
すことができる。

 結局は、この膨大な集合的な努力によって成し遂げられるものとは、単なる経
済的、環境的な悲惨からの歴史的な逆転というばかりでなく、文明の再生であ
り、将来世代の達成のための持続可能な基礎を作ることであるのだ。


裏表紙

Post Carbon Institute
500 N. Main Street, Suite 100
Sebastopol, CA 95472
(707) 823-8700
www.postcarbon.org

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