【地域再生】都市縮小に立ち向かう 『地方消滅の罠』増田レポートと人口減少社会の正体

都市縮小に立ち向かう――岩手日報2015年1月29日(木)
「地方消滅」増田寛也(前岩手県知事 編著書)の波紋
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 896の自治体が消滅しかねない――。全国の市町村の約半数が「消滅可能性都市」だとして、人工減少に警鐘を鳴らす前岩手県知事の増田寛也の編著書「地方消滅」が、波紋を広げている。東京一極集中をどう止め、国の在り方や価値観をどのように変えるか、議論が始まった。
 「出生率の最も低い東京に若い人が集まり、少子化の負のスパイラルが起きている。これが日本の姿。地域をどう持続させるかを考えて欲しい」

     ――焦り――
 政府の「まち・ひと・しごと創生本部」事務局長代理の山崎史郎が昨年12月、自治体関係者ら100人以上を前に講演した。認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」が、東京・有楽町のフロアを拡張した記念のパーティでのことだ。
 移住の情報提供をする同センターに昨年から常駐し始めた広島県職員は、積極的にPRに回る。一方、静岡県副知事の難波喬司(たかし)は「山梨県のブースの方がずっと大きい」と焦りを隠さない。
 ”消滅”を突きつけられて浮足立つ出席者を、山崎は努めて明るく励ます。「出生率が上がり、東京への人口流出が止まれば、地方から先に若返る。諦める必要はない」

    ――失敗――
 増田は著書で、政令指定都市などの「地方中核都市」に地域資源を集中させ、人口流出を止める”ダム機能”を持たせることを主張する。しかし首都大学東京准教授の山下祐介は、こうした「選択と集中」こそが、地方の切り捨てにつながると批判している。
 日本が強い国家を築こうと経済を優先させてきたことで、出生率の低い東京への一極集中が進み、そのことが人口減少につながった。東京を地方中核都市に置き換えても、規模が小さくなるだけで、同じような失敗を繰り返すだけだ。そう山下はみる。さらに地方の”消滅”が既定路線のように受け止められ、諦めムードが広がることも強く懸念する。
 「グローバル化の中でも、地域経済が生き残ることができるルールに変え、多様な生活が成り立つ社会へと切り替えるときだ。多くの人は、つつましやかな幸せを望んでいる」と山下。明治維新から続いてきた日本の「近代化」路線の転換を求めている。

    ――勇気――
 人口減少は日本だけの現象ではない。さまざまな都市の「縮小」が1990年代以降、世界で急増しているという。龍谷大教授の矢作弘は「都市の縮小が常態化することは歴史上なかったこと」だとして、「人口減少と高齢化の最先端」の日本だからこそ、都市政策の大胆な転換が求められるとしている。
 縮小都市の時代には、それぞれの都市が全ての機能を担うのではなく、都市同士が協働・連携して役割を分担するようなことが必要だという。
 「人にも資源にも限界があり、所有より共有を考えなければならない。地域間の豊かさの再配分の仕方が問われている。競争ではなく、助け合いの関係が多いほど暮らしは豊かになるはずだ」と矢作。
 人口減少で生じる土地や建物などの”空き”を活用し、都市の縮小を中心部の活性化などに積極的に生かす試みは、米デトロイトやイタリア・トリノなど、海外でも始まっている。矢作は「縮小という現実に、正面から立ち向かう勇気を持たなければならない」と力を込めた。 (敬称略)

山下祐介=首都大学東京(東京・八王子) 
※危機感をあおることで、地域間で人口を奪い合う競争にしてはならない。
本『地方消滅の罠』増田レポートと人口減少社会の正体(ちくま書店)ちくま新書900円+税
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矢作弘=龍谷大(京都市伏見区)
※人口が減れば経済成長は難しい。豊かさの再配分を検討することが時代の要請ではないか。

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