【岩手県紫波町の取り組み】取材した記事を書きました(初稿)

ラ・フランス温泉館
「母の見た風景、紫波の環境を100年後の子供たちによりよい姿で残し伝えたい」
ラ・フランス温泉館は、そう宣言している紫波町長が社長を務める、株式会社紫波まちづくり企画が運営する。「何のために」働くのか。ここで働く人たちの笑顔は「100年後の子供たちにより良い紫波を残すために」との思いからあふれてくる。
未来につながるエネルギーは、太陽光・太陽熱や地元木材が使われる。温泉の設備は、太陽光発電が一般家庭13軒分の電気を、太陽熱温水器と排水熱利用ヒートポンプが606軒分の給湯を行う。平成23年に完成した木質チップボイラーは、地元木材のチップを燃やし湯の温度を90℃まで上げてホテルの暖房・給湯に使うなど、まだまだ発展中だ。
化石燃料に頼らない経営をめざす温泉づくりには、「省エネ支援を行う事業者」が参加する。こういった事業者はESCO:エネルギー・サービス・カンパニーと呼ばれる。ESCO事業者は、エネルギーの使用を分析し(省エネ診断)、省エネ方策とその効果を示し(提案)、これをもとにエネルギーの使用量(ベースライン)を設定し、省エネ機器導入や設備の見直しによる省エネ効果を検証する。環境エネルギー普及株式会社とNPO法人紫波みらい研究所が設備の導入と保守運用を、盛岡信用金庫が金融面を、紫波町農林公社が木質チップの加工と運搬をというように、いずれも地元や近隣でつながっている。

オガールプロジェクト
紫波中央駅前の一等地が町有地で未利用だったら、しかもサッカー場が15面も取れるような10.7haが放置されているように見えたら、何が起こるだろうか。
「まち」も「人」もオガール(成長する)を合言葉に、町有地の利用は、市民・民間事業者・行政が連携した協同のまちづくりへと向かう。始まりは平成19年で、この年を「公民連携元年」と位置付けている。
全域に水田が広がり、果樹園や野菜畑が多くみられる紫波町では、農家の皆さんが安心安全な農作物の生産で、基幹産業としての農業を守っている。都市と農村が共生するまちを補助金に頼らない公民連携で進めるこの地域活性化の取り組みは、従来型の公共事業のあり方が問われる今、全国から視察・問い合わせが殺到するほどの注目を集める。

町有地オガール地区には、平成23年春に岩手県フットボールセンターのオープンとともに岩手県サッカー協会も移転し、平成24年には図書館・産直・飲食店などが同居する官民複合施設「オガールプラザ」が、平成26年にはオリンピックなどの世界大会で採用されている床材を常設する日本初のバレーボール専用体育館やビジネスホテルなどの入る民間複合施設「オガールベース」がオープンした。紫波型エコハウスによる宅地分譲をする「オガールタウン(住宅)」や地域冷熱供給「エネルギーステーション」の事業も始まり、今年5月には「紫波町役場新庁舎」も開庁した。

紫波町役場新庁舎
木造3階建ての庁舎は木造庁舎としては国内最大級の規模で、特徴は町産木材を構造躯体に100%活用して支え、下地合板や仕上げ木材にまで使用することで「木質資源循環のまちづくり」をアピールする。
新庁舎の整備は「民間資金等の活用による公共施設の整備促進法」PFI法(平成11年7月制定)に基づくBTO方式とよばれる、①建設は民間事業者、②完成直後に所有権を町に移転、③その後の維持・管理は民間事業者が行う方式により進められた。
率先した町産木材の活用は、お金がローカルに回る「地元経済の循環」で林業の活性化、「森林資源の循環」で森林の機能維持が図られる取り組みとなった。
冷暖房・給湯用の熱は、町産木材を燃料として燃やす木質チップボイラーなどを使うが、外から冷温水として供給することで火災のリスクもおさえる(紫波グリーンエネルギー株式会社が運営するエネルギーステーションから)。庁舎内には雨水をトイレ洗浄水に利用する設備、太陽光発電システム20kW(最大100kWまで増設可能)も設置された。実は雨水も木材も「太陽の恵み」であり、太陽光も含めた自然エネルギーの利用は、総工費の4〜5倍はかかるといわれる「建物の維持費(ライフサイクルコスト)」の削減をもたらす。
民間事業者の持つ知恵の活用という公民連携がもたらした効果は、多目的利用を想定した議場の柱の無い大空間のデザインにも見ることができる。見学は○○まで。
紫波中央駅前エネルギーステーション
駅前のステーションは、エネルギーの駅。エネルギーがつまった建物からはオガール地区内の施設に向けて、温水や冷水が地下に埋設された配管の線路を走り、暖房・給湯、冷房の仕事をして戻って来る。
利用する施設は、役場庁舎、住宅、オガールベースなどで、利用方法は、温水・冷水を直接取り出すのではなく、熱交換器で60℃程度の温水や冷房用の冷水にかえて使う。住宅では給湯や冷暖房だけでなく、浴槽の保温をする装置にも利用できる。エネルギーステーションは、温水を作る木質チップボイラー1基、冷水を作る吸収式冷凍機1基(予備としてLPガスボイラー2基、冷水チラー2基)と、蓄熱タンクなどを備える。
「地域熱供給」は、再生可能エネルギーとして森林資源の豊富な日本での木質バイオマス利用のテーマだ。1875年ドイツの地域暖房がはじまりとされ、1893年ハンブルグでの熱併給発電(コジェネレーション)を契機に普及が進み、1950年代に都市開発に伴い急速に普及したとされる。日本では大気汚染が社会問題となった1970年代に、札幌市がばい煙防止対策として熱供給を開始した(昭和46年)。
木質チップボイラーは高含水率対応で、水分を30~55%程度含む生チップも燃やすことができて山から搬出した木でも利用できる。消費量は年間1200トン(水分40%)が見込まれ、重油料金の1/3、夜間電力料金と比べても1/2~1/3程度となる。見学は○○まで。

紫波型エコハウスサポートセンター
紫波型エコハウスと聞いて「どこが紫波型なのか」と思わなかっただろうか。そもそもエコハウスとは何なのか。サポートセンターはオガールタウン分譲住宅を案内している。
①断熱、気密、日射遮へい、日射導入、蓄熱、通風、換気、自然素材(環境基本性能確保) ②住まいに必要なエネルギーは最小限に抑え、地域の特徴(太陽光、太陽熱、風、地中熱、水、バイオマス、温度差)を上手に生かす技術や工夫(自然エネルギー) ③暑い時は窓を開け寒い時は一枚着る、日除けのために草木を植えるなどの住まい手の意識や行動に寄り添う提案(エコなライフスタイルと住まい方) ④周辺環境、材料、工法、デザインなど、地域の特色を生かした住宅(地域らしさ)
地域らしさは、エコハウスが地域で永く受け入れられる魅力につながる。オガールタウンは、オガール地域にあって、駅、役場庁舎、図書館、商業施設や地域熱供給などが周辺にある。紫波町には、町が定める「紫波型エコハウス基準」があり、町産木材の使用や年間暖房負荷基準などが設定されている。「百聞は一見にしかず」で基準を満たしたモデルハウスを公開しているのが、紫波型エコハウスサポートセンターだ。坪単価はどうなのと、そんなことも含めて気軽に訪問して周辺も散策してみてほしい。
〒028-3318 岩手県紫波郡紫波町中央駅前二丁目3-31
電話:019-601-6595 FAX:019-601-6596 開館時間 10:00~18:00
休館日 毎週月曜日(月曜が祝・休日の場合はその翌日)と年末年始(12/29~1/3)

紫波町市民参加型おひさま発電事業
屋根貸しによる収入が町に、20年間にわたり入る仕組みになっている。
平成24年7月にスタートした電気事業者(ここでは東北電力)による固定価格買取制度(FIT)を活用し、再生可能エネルギー普及のため太陽光発電事業を実施する事業者(紫波グリーンエネルギー1号ファンド株式会社)に、紫波町は町内の公共施設の屋根を貸し出している。
平成26年度は3つの小学校と2つの公民館、それと紫波中央駅待合施設の屋根で東北電力への20年間の全量売電を開始した。平成27年度は4つの小学校と林業センターの屋根を予定しており、合わせて11か所の屋根で一般家庭およそ250世帯分の合計1メガワットの電力を産み出すことになる。
発電事業費の一部は、市民からの出資(市民ファンド)でまかなわれ、出資者に対して配当が行われる。プロジェクトには地元の事業者が参加し、屋根の塗装や補修、太陽光パネルの設置・パネルを載せる架台の設置、電気工事、維持管理などを行うことで、出資したお金は地元で循環する。
設置した場所が小学校や公民館や駅などだから、市民の目に触れ、環境学習教材として再生可能エネルギーに対する意識も高まっている。見学は○○まで。

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