【国際リニアコライダー(ILC)誘致】「血沸く」記事・大型研究施設の誘致問題の視点から

2019.11.11(それが報道された2019.11.12)という日は、ILC誘致にさまざまな疑問を投げかけてきた人たちにとって「血沸く」を体感する日になるだろう。研究者の冷静な目、若い大学院生の研究発表から目が離せない。

胆江日日新聞 ILCニュース 2019年11月12日
【石川県野々市市=児玉直人】素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致活動を検証した複数の研究成果が10日、金沢工業大学で開かれた科学技術社会論学会(会長=調麻佐志(しらべ・まさし)・東京工業大学教授)で発表された。このうち、東京大学大学院学際情報学府修士課程の菅原風我(ふうが)さん(24)=水沢出身=は、誘致活動の盛り上がりの背景を探った。ビッグサイエンス(巨大科学)施設の誘致活動が、地方行政や議会、産業界、教育現場も巻き込みながら、なぜこれほどまで盛り上がっているのか――。帰郷した際に実施した地元での聞き取り調査、報道記事の分析などを基に「熱狂形成」に至った流れと、そこに潜む課題などを掘り起こし、ビッグサイエンスと地域社会の在り方に一石を投じた。【社会面に関連】

投稿者 : tanko 2019-11-12 6:00
ILC誘致 「熱狂」なぜ(水沢出身の東大院生、菅原風我さん)
http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/details.php?bid=889
菅原さんは「科学技術と地方行政」をテーマにしたグループセッションで登壇。「熱狂(hype(ハイプ))の形成―ILC誘致の事例から」と題し、研究成果を述べた。約40人が聴講した。
 菅原さんが帰郷した際、「ILCさえ決まれば、水沢は仙台をも超える人口を抱える国際研究都市になる」と立ち寄った喫茶店の店主から聞いた話が今回の研究のきっかけ。
 ILC計画や北上山地への誘致活動自体はある程度知ってはいたが、全国的認知度はさして高くない。メディアの取り上げ方も、一部地方紙とそれ以外の地方紙、全国紙では扱い量だけでなく、論調も大きく異なっているなど、地域と首都圏でのILCの見え方の違いに気付いた。さらに、誘致実現を盛り上げる声の一方で、日本学術会議や、2014(平成26)年から約4年間かけ文科省が設置した有識者会議では慎重さがにじみ出る見解が続出していた。
 菅原さんは、岩手、宮城という地域、そして素粒子物理学コミュニティーという、限られた分野を中心に起きている「熱狂」のプロセスを読み解くことで、巨大科学と地域コミュニケーションの在り方を探れるのではないかと考えた。
 菅原さんが演題に示した「hype」とは、学術用語として使う場合「科学技術に必要な資源(人、もの、資金)を調達する役割を担い、将来像を形作るもの」と定義されている。「熱狂」「誇大宣伝」とも訳される。
 「期待と熱狂は地続きだ。過去に抱いた期待は、現在の科学技術の進展を評価する物差しにもなる。期待通りにならなかった場合、結果としてそれは『誇大宣伝』になってしまい、それまで誘致に携わっていた人たちの信頼関係や評判を落とすことにも成り得る」と菅原さんは指摘した。ただし、iPS細胞(人工多能性幹細胞)のように科学への期待が、その分野の発展に寄与する例もあると説明した。
 菅原さんは「熱狂はどんな科学技術でも起こりうること。だが、過剰な熱狂によって生じた誘致や広報周知等に投じたコストは、いずれ地域や納税者である一般市民が負担することになる。地域社会や一般市民が、特定の科学計画や事象に対し、さまざまな方向からの見解に触れられる機会が設けられるのが大切。その一つの手段が、科学技術コミュニケーションだと思う」と主張した。
 同日は、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙機構の横山広美教授、一方井(いっかたい)祐子研究員が、「ILCの認知度調査から見える課題」と題し発表した。

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投稿者 : tanko 2019-11-12 6:30
ILC誘致 周辺のみ過熱「本末転倒」(東京大大学院情報学環 佐倉統教授)
http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/details.php?bid=890
――菅原さんの研究タイトルに「hype(ハイプ)」という言葉が出てきた
 例えば、物質を分子レベルで制御する「ナノテクノロジー」の例を見ると、この言葉を聞いた、専門家ではない一般市民や経済界の人たちは「こんなことができる」「何でも万能にできるぞ」など、空理空論がどんどん盛り上がっていく。技術的な問題や危険性などを熟考するより、思いばかりが過熱して先に進んでしまう。これを一般に「hype」と言っている。最近よく耳にするAI(人工知能)も、実はその傾向にある。
――小学校や中学校で行われているILC出前授業ではリスクの説明がほとんどない。何も疑わず「ILCはすごいものだ」と感じてしまうだろう
 出前授業をするにしても、ILCのことだけを説明するというのは問題があると思う。物理や理科の話をして、その上で「ILC計画というものがある」というのが筋だと思う。出前授業の目的が、「ILCの実現を目指すため」「子どもたちにILCを知ってもらうため」というのであれば、それは出前授業ではなく「宣伝活動」になっているのではないか。
――候補地周辺の人たちがILCを巡る動向を聞くのは、推進当事者側からが圧倒的に多い。他の分野の学者から客観的にILC計画について分析し、課題点などを地域や推進サイドにフィードバックするようなことはできないものか
 学術会議があれだけ厳しい判断を下した以降も、候補地の地元では今なお誘致活動が盛り上がっているということすら、他分野の先生たちは認知していないと思う。
 科学技術が大型化しており、膨大な予算がつぎ込まれるとなると、岩手や東北だけの問題、素粒子物理だけの問題ではなくなってくる。いろんな分野の研究者、生命倫理、医学倫理、科学ジャーナリズムなどの専門家がウオッチしていくべき問題だったと思う。
 ただ、何らかの形でILC計画や誘致に携わったり、調べたりしている人でなければ議論できる情報を持ち合わせていない。広い視点から意見が言えるのは、学術会議の審議で委員を務められたような方でないと難しいかもしれない。とはいえ、地元の方々に多様な学術からの見解を届ける意義はあると思う。
佐倉統氏(さくら・おさむ)1960(昭和35)年東京生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。三菱化成生命科学研究所、横浜国立大学経営学部、ドイツ・フライブルク大学を経て、2000年より東京大学大学院情報学環。進化生物学の理論を軸足に、生物学史、科学技術論、科学コミュニケーション論など幅広く研究し、現代社会と科学技術の在り方を探究している。
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