【ILC】一関市長へ「公開質問状」(ILC誘致を考える会・一関市)

令和3年2月17日
一関市長 勝部 修 様

「ILC誘致を考える会」共同代表 千坂げんぽう・原田徹郎
「ILC誘致を考える会」世話人会一同・会員有志

公 開 質 問 状

 昨年来の新型コロナウイルス感染症をめぐる対応にお忙しいことと存じます。
 さて、私たち「ILC誘致を考える会」(以下、考える会)は、ILC誘致について様々な角度から学習検討を続ける中で、貴職に2度の公開質問状や意見書を提出してまいりました。

 特に「250 GeV ILC計画を日本に誘致することを支持するには至らない。検討するならば、マスタープランの枠組みで行うのが適切(2018年12月19日)」との日本学術会議の所見が出て以降の文部科学省(以下、文科省)見解は、以下の通り、ILC日本誘致には絶望的なものです。

 ・「ILCに関する政府見解」文科省・磯谷研究振興局長(2019年3月7日)「現時点で日本誘致の表明には至らない。正式な学術プロセス(マスタープラン)での議論が必要」

・「ILC計画について【発表】」文科省・研究振興局(2020年2月20日)「文科省は、2019年3月7日の見解に沿って対応」「2020年1月30日に公表されたマスタープラン2020において、重点大型研究計画に選定されなかったが、ヒアリング対象計画のため、ロードマップ2020に応募するならば審査の対象とする」「米国からは、具体的な貢献の表明はなく、日本がILC計画をホストする場合には支持することと、現物貢献が可能であるとのコメント」「英仏独からは、国際的な分担について、現時点でILC計画に参加する資金的な余力はないとのコメント」

 ・「ILCについて、記者の質問へ回答」萩生田文科大臣記者会見(2020年6月23日)「(ILCを)東北地方に予定しているという事実はございません」「2019年3月7日の政府見解に沿って対応している」
 その後、文科省のロードマップ2020への応募を提出団体の高エネルギー加速器研究機構(以下、KEK)は2020年3月に取り下げていたことを半年遅れの9月に公表しました。これにより2021年の政府決定にILCは載ることは無く、日本誘致が絶望的となりました。2020年8月に国際将来加速器委員会(ICFA)が設立したILC国際推進チームにも方針変更が求められます。

 ILC日本誘致が絶望的になるのと歩調を合わせるように、新型コロナウイルスの蔓延で日本はもちろん、世界中が危機的状況にあることは貴職もご存じの通りです。
 この状況を受けて、私どもは、昨年9月に緊急に要請書を提出致しました。終焉が見通せない事態に、当会の会員も自粛を心がけ今日に至っております。こうしたILCどころではないという現状では、県内各自治体はじめ、ほとんどのマスコミ報道もILCを俎上に載せることをためらっており、ILC誘致活動の実質的終焉を告げています。

 しかし、貴職は、いまだにILC誘致運動の予算化を図ろうとしています。そこで今回は、無駄と分かっているのに、なぜ誘致運動の予算化を続けるのか、また税金の無駄遣いになることが明白である以上、貴職は今後どのように責任をとられるのか、「考える会」会員、一関市民の立場で以下の点をお尋ねする次第です。

 一関市民、注目の課題ですので、文章にて、令和3年2月25日までにご回答いただきますよう公開で質問致します。

Ⅰ:「いちのせき市議会だより」によると、議員の質問に対し「今後、政府が意思表明を行い、欧米各国と具体的な議論を進め、次のステージで日本政府の決断がなされると受けとめており、前進しているという考えである」と、根拠のない願望を述べています。そこで以下の客観的事実を認められるのか、あるいは認められないのか、その認識をお尋ねします。客観的事実となる文科大臣による政府の表明は次の2つです。

(a)文科大臣発言:「プランでの検討(補・日本学術会議が策定する優先度の高い大型研究計画を示すマスタープラン2020のこと)では大型プロジェクトの正式なプロセス。ILCも同じ枠組みで議論し、課題を検討する必要がある」(2019.1.26)
(b)文科省大臣発言:(ILC日本誘致候補地が北上高地だとの前提で記者が質問した際の発言)「東北地方に(補・ILC誘致を)予定しているという事実はない。九州でも熱心に誘致している。」(2020.6.23)

質問1:政府は(a)のようにILCを以前のように特別扱いしないと決断しています。その結果、申請団体のKEKは、大型プロジェクトのロードマップ2020に提出した申請を密かに取り下げていました。ロードマップ2020に取りあげられることは不可能で、そのことが知られると、ILC日本誘致の無理なことが広く明らかになることをKEKが怖れたものと思われます。
 もはやILC誘致を実現するためには、次の大型研究予算の3年計画、マスタープラン2023に申請するしかありません。しかし当初計画でILCは、2021年に政府による誘致決定、そこから4年の準備期間、10年の工事期間を経て、2035年の実験開始となっていました。もはやILC計画は時代遅れになったことは明らかです。
 さらに政府は、(b)のようにILC誘致候補地を北上高地と認める発言は1度も行っていません。また、政府間の話し合いでも、欧米は資金を出す余裕はないと明言しています。したがって、政府は欧米各国と議論を進めようがありません。「国際協調」を進めているのは、KEKが属している素粒子物理学会での話です。一専門分野の国際協力が進んだからといってもそれが各国の協力にはつながりません。
 以上(a)(b)の事実を、貴職はお認めにならないのでしょうか。

Ⅱ:人口減、新型コロナウイルス感染などが財政難の一関市を襲っており、上下水道、国民健康保険など市民の生命を支える基本的な行政サービスの値上げが避けられない状況になっています。
 それにも関わらずILC誘致推進運動の事業費は、運動が本格化した平成24年(2012)から毎年平均1500万円強が使われています。また、中学生の研修費などで毎年平均200万円強、英語の森も200万円強支払われています。他に「市長公室・ILC推進課」の常勤職員の平均給料を600万円とすると、5人なので1年に3000万円支払っていることになります。
 以上、合計すると平均して毎年約5000万円、今までの合計では約4億円をILC誘致費として使ったということになります。以上をふまえて質問2にお答えください。

質問2:貴職は令和2年(2020年)3月にILC日本誘致が絶望的になった(判明したのは9月)にも関わらず、令和3年度予算においても従来通りの予算化を図っていると聞きます。
 ILC誘致は、当初計画であるロードマップ2020が昨年取り下げられましたので、令和3年度の予算化は今までとは明確に質的に異なる税金の無駄遣いと言わざるを得ません。計画において工事開始予定とされた2025年に、工事が開始しないとき、貴職はどう責任を取られるのでしょうか。
 また、「ILC推進課」の廃止及び、ILC関連業務を兼務する「政策企画課」などの縮小は考えていないのでしょうか。
 さらに「市長は、ILC誘致を声高に叫ぶだけで、8年間で約4億円も使い、市民が要望する事業はほとんど取りあげなかった」という声が少なからず聞こえてきます。このような市民の声を貴職はどのように受けとめるでしょうか。
お聞かせください。

Ⅲ:貴職は日本学術会議の「日本誘致を進めるに至らない」という所見が出てからも「1万人の国際科学都市ができる」などの情報を生徒たちにまいています。この件でさらに日本学術会議の所見は「ILCの建設期間にはそれなりの作業人員が地域に常駐することが想定されるものの、稼働段階に入れば現地に必ず常駐するのは加速器の運転保守に携わる人員などが主となることが想定される。(中略) ILC研究所では建設終了後に常駐人口が減少していく可能性があるとされている。」とあります。
 以上のことから「ILCの日本への誘致」「ILCの北上高地への誘致が決まったとすること」「1万人の国際科学都市ができる」とする情報も、KEK、岩手県、貴職が言い広める根拠のない情報であることが明白です。

質問3:これからの一関を担う若者に、事実に寄り添わない夢を伝えることは、彼、彼女たちに「一関市長に根拠のない情報を教えられた。大人がにせ情報を伝えるような一関はダメだ…。」と心の傷を負わせることになります。
 貴職は、根拠のない情報を教えた若者たちに、今後、どのような謝罪をされるつもりでしょうか。ご認識をお聞かせください。

Ⅳ:最後に、ILC誘致に伴う数々の不安について、これまで分かりやすい説明は成されていません。代表的な次の点につきまして、一関市としての説明をお願い致します。

質問4:
① 残留する放射能物質のトリチウムはビームダンプ内に200年間保管し、濃度が日本の排出基準以下に完全落ち着くのを待ち、自然界(砂鉄川)に放流する。【説明会での解説】

② この2月13日の東日本大震災の余震が尾を引いていますが、頻繁に発生する太平洋側の地震について、政府の地震研究所も警戒を呼び掛けていますが、この点で向う100年単位でも本当にILCトンネル等は安全と言い切れるのでしょうか。

③ 当会会員の一関民主商工会の調べでは、「このコロナ禍で一関市内約100社の小企業は、昨年4月の緊急事態宣言から今日まで、一切の回復を見ていない」としています。コロナ禍での経済不安とILC予算の関係を一関市ではどのように、配慮しているのでしょうか。

④ 地球温暖化が進み、自然環境の保全は待ったなしとされています。特にこの先10年間の対応は世界的にも問われています。この中でのILC工事による大がかりな道路建設・トンネル土木工事・輸送・巨大電力使用、排出残土の運搬と処分などについて、どの様にお考えでしょうか。

 以上4点についてご返答を2月25日までに文書にてお答えください。ご回答は、郵送で結構です。
以上

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参考資料(1)河北新報.jpg参考資料(2)文科省・政府見解.jpg参考資料(3-1)20200222河北新報3面.jpg参考資料(3-2)20200221文科省発表和文1.jpg参考資料(3-3)20200221文科省発表和文2.jpg参考資料(4)萩生田文科大臣記者会見.jpg

参考資料(1)関連・ブログ記事
ILC誘致支持せず 日本学術会議 回答 「政府は判断を慎重に」
https://senmaya.at.webry.info/201812/article_7.html

参考資料(2)関連・ブログ記事
ILC誘致 政府見解・国民への「刷り込み報道」か?曖昧さによる混乱か?
https://senmaya.at.webry.info/201903/article_4.html

参考資料(3)関連・ブログ記事
【ILC】国際リニアコライダー(ILC)計画について【発表要旨】2020年2月20日 文部科学省研究振興局
https://senmaya.at.webry.info/202002/article_18.html

参考資料(4)関連・ブログ記事
【ILC】欧州素粒子物理戦略2020について萩生田文科大臣による日刊工業新聞記者の質問への驚きの回答とは?
https://senmaya.at.webry.info/202006/article_6.html

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